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« place | 雲の下に生きる道化師 »

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a sham world's end


オリジナルとオリジナルに成れない機械の話

・シリアス
・メタソニとソニック
・死ネタです。ソニック死んでます(多分)
・一部、血・グロ表現が入ります。血やグロが苦手な方はご注意下さい




 雨が降っていることに、今気が付いた。
ぱちぱちと無機の体に当たる水は、落ちる度にパンと弾けて、数個に分裂して流れ落ちた。
その形は、どれも同じに見えた。
違うとしても、降って来るこれらは全て地の染みとなり、蒸発して消えるのだから、
形は違えど同じ物だと決め付けても、きっとそれは少なくとも間違いじゃない。
木々が作る天井の隙間から、同じ物が線を描いて、一直線に地へと降り注いだ。

 染み ――― ふと、その染みが目に止まった。
他とは違う、どす黒い泥を鮮やかな真っ赤に染める液体が、足元を流れていた。
 何だ、これは。
 ・・・・・ああ。
 その物体を認知して、やっとコンピューターが活動を始めた。
 そこに、肢体がごろりと転がっていた。

 それは、人形のように、四肢を地面に投げ出して、そのまま動かずにそこに転がっていた。
その人形の、自分と同じ 青いトゲすらも、時が止まったように停止していた。
青い身体は薄暗い闇にまぎれて、それはまるで青鈍の色を羽織っているようであった。
 ぱたぱたと有機の体に当たる水は、落ちる度にパンと弾けて、数個に分裂して流れ落ちた。
ただ、流れ落ちた水は、次々と ――― 鮮赤の ――― 染みになって、他と一体化していた。

 ・・・この赤は、何処かで見たことがある。
 段々と面積を広げて行くそれを、ロックオンして標準を定めて、メモリの中で検索をかけた。
時間は、それほどかからなかった。

――― 『血』。

 結果を表示した画面を眺めて、それから己の手に目をやった。
どす黒い泥と同じように、同じ赤に染まっていた。
 ああ。
 途端、飛んでいた記憶が修復された。
有機物特有の生々しい、粘りつくような肉の感触が、手に蘇る。
指を曲げると、関節に滑り込んだ血が張り付いて、ギシリと鈍い音が鳴った。

 そうだ。
 この手で、彼のからだを穿ったのだ。


 ピーッ、聴覚機能の奥で、高い音がなった。

『プログラム 達成』

 視界の内側に、文字が映し出される。


 バシャ、水の音がした。『冷たい』が、触覚機能を通じて送り込まれる。
足の機能が停止して、無意識のままに座り込んでしまったのだった。


「オレは・・・。オレは・・、」

 音が出た。己の声だった。

「オレは勝ったのだ、オレは、勝ったのだ。やっト、オレの忌まわシい分シンに」

 呆然と漂うその音に、生気はなかった。


 生まれた時から、フェイクの存在だった。
否定しても拒絶しても、「オリジナルがいる」という事実が、いつも脳を蝕んだ。
オリジナルがいなければフェイクは成り立たぬ。そして、フェイクはオリジナルにはなり得ぬ。
何処までも付き纏うその現実に、必死に足掻いた。
オリジナルを倒せば、オリジナルを越えた存在になれると。
オリジナルを越えれば、自身がオリジナルになれると。
そう、数字が思っていた。


 なんて、愚かな。



 オリジナルに成りたかった。
 オリジナルに成りたかった。

 生まれた時から、「第二」の存在。
 それならば、オレは何故生きる必要がある。何故オレはここにいる必要がある。
 ・・・だから、オレはオリジナルに成りたかった。
 オリジナルに縛られることなく、
 オレの、オレだけの、
 オリジナルにない、オレだけの、
 オリジナルとして、生きたかった。

 フェイクがオリジナルに成りたいと思う事は、至極当然のことだろう?



――― そう望むのも、また数字。




 雨が、降っていた。
落ちた数十の、数百の水が、赤い液に姿を変える。
ふと、触れてみたくなった。

 仄かに、温かかった。


 この数字は何て高性能なのだろう。
非常に役に立つが、この機能の高さが、腹立たしくて憎かった。
出さなくてもいい答えまで、知ってしまうから。

 ああ、分かっていた。
 無機が有機になるなど、出来る訳がないと。
有機が持つこの温かい液が、無機の中に流れることなど、到底有り得ぬ話だ。
有機に流れる温かい体温を、血液を、――― 感情を、
無機の中に流れさせるなど、そしてそれを願うなど、なんて、

 なんて、愚かな。



 聴覚機能が、機械音を拾っていた。自分が出す機械音である。
考える度、その考えた事が次々迅速に処理されて、
全て数値化・暗号化、数字になってメモリへ保存される、その音であった。
もう聞き慣れた機械音。
無意識に稼動し小さく出される音が、何故かいつも悲しかった。

 そして、そう思う度に、その機械音を 聴覚機能が拾う。



 フェイクは、オリジナルに成り得ない。
そして、オレはこの画面の意味を知る。

『プログラム 達成』


 それは、プログラムの中でしか生きれない無機の、フェイクの存在の終着点。




 そして、オレは
 オレを司る全ての機能を、永遠に停止させた。


― a sham world's end



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