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« The Chosen One | ソニックSSS »

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[キャラ崩壊有]ソニックSSS


どう見てもそのキャラぽくないのにキャラ名を出してしまっているために
オリジナルにも入れられないソニックSSSです。
キャラ崩壊注意。ソニックとシャドウしかいません。
全てシリアス・鬱々展開です。

― all of you
― 夕闇の朝日
― 砂上の望





 君は「なんだ」、と言って僕の手を放した。

 驚いて君を見れば、君は何でもないというような顔をしていた。
別に怒っているわけでもないし、悲しんでいるわけでもなく、
絶望しているわけでもなかった。
けれど、喜んでいるわけでも嬉しんでいるわけもなく、
希望を持っている表情でもなかった。
ただ何でもないような表情をしていた。
そこには一切の感情がなかった。
 どうしたと問うても応答はなかった。
 まるでそこら辺に転がっている何でもない岩のように、ただ、前を見ていた。
彼の前には僕がいた。
しかし、彼は僕を見ていなかった。

「…一体君は」
「なあ、どう思う」

 のっぺらぼうが喋り出した。

「オレは変わらないまま、周りはどんどん変わってくんだ。
 全部が前に進み出して、ただ些細だけど一歩ずつ、周りの世界は変わってくんだ。
 でも、どうしたことか。
 オレは?
 オレはどうしたって」

 面なしの眉が動いた。


「変わったのはオレだったんだ」


 その面は、それでも心の表面に佇むだけだった。


 一体、君は何が言いたい。
問うたけれど、君は面を僕に向けるだけ。
俯くこともせず。
歩むこともせず。
その面は、仮のものではなかった。
本当の彼の顔であった。

「いや、何でもないんだ」

 そんな風に、今度は笑って。


 それは全部、彼の顔。紛れもない彼自身。
強がり、とも、また違うのだ。
それが、彼自身なのだ。
その彼自身を壊してしまう癌なのだと、彼も気付かぬまま、
そうやって、彼自身のように笑う。


「そうか」

 だから、彼の心の中を詮索するようなことはしない。
それが彼自身なら、僕は彼を受け入れるべきだし、
きっと、彼にそれを伝えたとて無為に散るだけだ。

 けれど、
崩れる彼の世界を何もせずただ眺めているほど、僕も無知恵じゃない。



 彼が離した手を、僕の手で繋いだ。

「もしそうだとして、けれど変わらぬ君も変わった君も、全て君自身だ。
 それならば、以前と同じように、僕は君を受け入れよう」


 この繋いだ手が、どれほど相手の支えになるか、僕は知っている。
僕は彼を知り得ないし、たとえこれが彼を傷付ける刃であるとしても、
これが僕であるし、僕自身であるから。

 その時、彼は僕の手を握り返した。
そして、彼は僕の名を呼んだ。


「シャドウ」



― all of you



*



 彼の欠片みたいな体を、抱き起こした。
妙に重たく感じた。
彼の抱え込んでいるものの分が加算されているんだろう、と片隅で思う。
しかし、彼は自身の体を、もっと重く感じている。
座れないぐらいに。立てないぐらいに。
 全身の力が抜け死体みたいになってる彼の、名前をそっと音にしてみた。
 最初は、反応はない。
 二回目には、耳がぴくりと動いた。
 三回目になって、固く閉ざされた瞼が震えた。
 彼が目を開けたら、そこから塞き止められたものが溢れ返った。

「………」

 小さな口から、息が、漏れる。


「おはよう、」

 四回目の同じ音は、彼を苦しくさせたみたいだった。

「おはよう」
「明日なんて来るはずない」
「朝日は昇るさ、、毎日欠かさず」

 五回目に、彼は目を細める。
それは、憎しみのように見えて、
ただ日の光に眩んだだけのように、オレには思えた。
彼だって、分かってるのだ。

「なあ、シャドウ」


 六回目、彼はゆっくり目を閉じた。



―夕闇の朝日



*



 また、見えなくなった。
全てが靄に姿を消して、そこに確かにはずなのに、その気配さえ僕には分からない。
雲の中にいるような、しかし決して雨が降らないその世界で、
僕は飢餓した子供のように、ただ座り込んで一点を見つめた。
歩き出すことはしない。
僕にはそんな度胸も勇気もなかった。

 ああ、また、たった一つの下らないプライドのせいで。
そのくせ器に似合わない大きさに膨れ上がったそれは、
僕に孤独を押し付けては世界を嘲笑う。

「もう、たくさんだ」

 僕はそうして、眠ることを願う。



「シャドウ」

 誰だ、僕を呼ぶのは。

「シャドウ」

 知っている。
君はまたそうやって、僕に現実を覚まさせるんだ。



 目を開く前に、彼が姿を現した。
凛とした、空みたいな青を纏った体が、全ての世界を語る。
そう、そのプライドさえ覆すほど。
僕は彼の世界が欲しかった。でももう叶わない。

「そんなことないさ。オマエが望むなら」

 そんな風に彼は空虚な希望を押し付けて、僕に苦しみを与え続ける。
彼にとってはそれは空虚じゃない。
満ち足りたオアシスのような光だ。
けれど、それは僕の手に渡った瞬間砂漠に変わる。
そして一粒すら僕の心臓には残らない。

「要らない。もう、そんな空っぽな希望なんか、」

 それを知っていて、僕はいつも彼の希望を甘受した。
信じていたかったから。

「空っぽなんかじゃないさ、シャドウ。さあ、」



 そして、僕は目を開けた。



― 砂上の望
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